[ Play No #0148 ]
[ 2024/6/12 ]

Road 96というインディーゲームをクリアしましたので感想です。

このゲームをプレーしてみて、文化や言葉の壁は思ったよりも高いことを感じさせられました。

[ https://road96.com ]

初めにゲームの説明です。

このゲームは権威主義国家のペトリアという架空の（アメリカの田舎の雰囲気がする）国を舞台にした1人称視点のアドベンチャーゲームです。プレーヤーはこの国の大統領選挙の期間中に希望を求めて国を出ようとする少年・少女となって国境を目指し、その旅の中で様々な人に出会い、体験します。

お話は全体を通してリニアに進行しますが、プレーヤーの操作する少年や少女は各エピソードで異なり、毎回異なる１０代の若者を操作することになります。エピソード１の主人公は自動で決まりますが、それ以降は３人の候補の中からプレーヤーが選択します。主人公ごとに出発点や体力、性別、所持金が違っていますが、基本的に誰を選択したとしてもほぼ国境までたどり着くことができるようになっています。

すべての主人公で共通しているのは、全員が国を出ようと国境を目指して行方不明になっている点で、国境までは比較的簡単にたどり着きますが、実際に国境を越えられるかどうかはプレーヤーの選択次第です。運よく国境を越えられることもあれば、選択次第では途中で力尽きることもあります。

主人公の人生（エピソード）は一度きりですが、プレーヤーは主人公を通して７人のサブキャラクターたちに起こる出来事を体験することができます。エピソードごとに主人公を変えながら少しずつ回収して、全体として一つのシナリオを楽しむことができるという構成となっています。

この７人のキャラクターは主人公と同じ世代の若者であったり、子供を心配する親であったり、政治の変革を目指すトラックドライバーであったり様々ですが、共通しているのが、それぞれが自分の信念をもっているところです。彼らが主人公と出会うことで、お互いに影響しあい、後の展開が決定していきます。

また先に書いたようにゲーム内の時間は大統領選挙の期間のお話で、事あるごとにこの国の政治の問題についてのやり取りが出てきます。システム的に主人公がとる行動は少なからず世論の動向を左右するようになっているので、最終的な大統領選挙の結果に影響することになります。

ここから感想です。

率直に言って、楽しい体験のゲームだとは言えないゲームでした。全体的によくできているゲームだなとは思いますが、今一つ共感できないというかのめりこむことができないゲームでした。雰囲気がよさそうで、のんびりした気分を味わうことができると想像してずっとプレーしたいと思っていただけに、残念でした。

ゲームをプレーしはじめてすぐに感じたのは、設定された日常が違いすぎているところです。このゲームはテクニックや知能を求められるものではなく、ほとんど共感することに全振りしたようなゲームなので、どれだけゲームの世界に没入することができるのかが重要となると思いますが、そこが世界観的に難しいゲームとなっていました。

このゲームの開発はフランスらしいですが、ベースが明らかにアメリカンなんです。ロケーションであったり、キャラクターのノリであったり、オブジェクトの造形や街の雰囲気なんかもすべてがアメリカン。常識や美意識的な部分も同じなので、少年たちがこの国に不満や不安を抱えているというのはわかりますが、ヒッチハイクでの移動や、荒野でのパーティーというシチュエーションなど、受け止めきれない日常（殺し屋に強盗に反政府勢力も出てくる）が多くて共感することができませんでした。

また、ローカライズも問題がありました。このゲームはボイスがついていますが英語のみで、日本語は字幕のみ対応です。それはそれでよいのですが、なぜかかすれて読めないところがあったり、表現のブレがあったりで読みやすいとは言えないです。一応意訳はしてくれていますが、時々出てくる選択肢の中で英語特有の言い回しを日本語にしたことで、肯定なのか否定なのかが分からなくなっているところがありました。

一方でシナリオの組み方はよかったと思います。腐敗しかかった国から脱出する若者をテーマとしながら、サブキャラクターのエピソードを少しずつ明かしていくことを上手に組み合わせられていました。主人公はどこにでもいる若者という設定も自然だし、だから顔と名前がはっきりしないのも納得できるので、悪く言えば周回しているだけの作業が気になりませんでした。テーマとコンセプトがマッチしていたからだ思います。

このゲームは根本的なところで共感を得にくいうえにローカライズがよくないため、反りが合わず上滑りした体験のタイトルとなりました。もう少しローカライズに力を入れて、人物の造形を作りこんでくれていればよかったなと思います。