【ネタばれ】「神無迷路」クリア後の感想
[ Play No #0145 ]
[ 2024/5/28 ]
神無迷路というインディーゲームをクリアしました。
話の内容こそ違うけれど、かまいたちの夜を追体験した気分にさせてくれるとても良い作品でした。
[ https://store.steampowered.com/app/2876250/_/?l=japanese ]
簡単にゲームの紹介をしておくと。
神無迷路は日本が舞台のテキストアドベンチャーゲームです。昔ながらの画面のイラストの上に文章が重ねて表示されるタイプのゲームで、所々で選択肢が示されて選んだものによってお話が分岐していきます。いわゆる昔のサウンドノベルというジャンルに入るゲームです。
作者自身がSNSにて「かまいたちの夜」についてよく発信していることからもわかる通り、ぱっと見はかまいたちの夜に似ています。人物がシルエットで描かれていたり、画面の構図などもあえて寄せている感じがあったりで、かまいたちの夜をプレーしたことがある人であれば一目で既視感を覚えるほどだと思います。といってもパクリというレベルではなく、かまいたちの夜へのリスペクトが感じられるつくりとなっています。
簡単に序盤のストーリーを説明しておくと。話は大学浪人中の主人公(波立良志:はりゅうりょうし)が金欠状態から脱するために高額のアルバイトに応募して、山奥にある廃駅にやってくるところから始まります。そこで数人の仲間とともにある場所に向かうことになりますが、主人公はアルバイト仲間の一人から声をかけられます。それはかつての幼馴染でした。彼女は再会を喜んでいますが、主人公は強烈な違和感を覚えます。その幼馴染はずっと前に死んでいるはずだからです。主人公は違和感を抱えたままアルバイトに向かい、そこで事件が起こるという内容です。
このゲームはかまいたちのように選んだ選択肢によって分岐してお話が大きく分かれていくため、当然マルチエンディングとなっています。いくつかのエンディングは共有されていたり、新エンディング以外はバッドエンドのような扱いになっていたりしますが種類は多彩です。リプレーもやりやすくエンディングを迎えると「メニューを開く」を選ぶことでチャートからすぐに分岐個所を選んでプレーしなおすことができます。また、ゲーム途中でも右クリックでチャートが表示されるのですぐにルートを変えることもできます。一旦選択してしまうとキリがつくまで動かすことができない昔のゲームとは違ってとても遊びやすいです。
ちょっと意外だったのはこのゲームの作者は中国の方だということです。ほかの国の人が日本を舞台にした作品を作るのは時々ありますが、大体の場合は忍者や侍推しで、しかも違った日本感になる傾向にあります。アクションゲームであればそれも許容できますが、ノベルゲームだと違和感が出てしまいそうです。しかし、この作品をプレーした感じでは文章もイラストもそんな違和感や抵抗感は皆無でした。もしかすると文章自体は翻訳を依頼されているのかもしれませんが。
もう一つ意外だったこととして、日本語だけにボイスがついているということです。作者が中国の方(不明確ですが)なのに日本語だけについているのがちょっと意外でした。憶測ですが日本ではインディーで募集できる声優を探しやすいのかもしれません。
ここから簡単な感想です。
このゲームはとても満足度の高いゲームでプレーしてとてもよかったです。ちょっと気になる部分もありましたが、初めから終わりまで通してそれなりに楽しくプレーすることができました。
一番良かったところとしては、地味ですが、おおよそPVを見た通りの雰囲気のゲームだったのがよかったです。背景のイラストは細かなところまでよく描けていますし、ノベルゲーで一番重要な文章も申し分ないし、効果音や音楽も雰囲気に合ったものとなっていました。なによりぶっとんだ個性の持ち主とか、巨乳の萌えキャラなどによる煽りなどが一切なかったのが個人的にとてもよかったです。キャラクターの個性にお話が邪魔されることがないので安心してプレーに集中することができました。唯一僕っ子が一人いますが、自分には許容範囲でした。
文章の読みやすさもこのゲームのいいところです。テキストアドベンチャーですから当然といえば当然ですが、くどくなく、癖もないとても読みやすい文章でした。SFをテーマにしている関係で専門用語はたくさん出てきますが、必要以上に専門用語を振り回したり、実は作者もよくわかっていないことが露呈したりするような素人臭いところもなかったので、読んでいて安心することができたところもよかったです。
文章表現はかまいたちのそれに似ていて、セリフと字の分のバランスがよく、お話に集中して遊ぶことができました。このゲームはSF(と若干のオカルト)がテーマとなっていますが、かまいたちの夜に似せた演出方法との相性はよかったと思います。まさに冒頭で言ったようにかまいたちの夜の雰囲気そのままにを別のストーリーにしたようなゲームでした。
かまいたちにない要素としてはボイスが入っていることですが。声優さんもガチのプロというわけではないと思いますが、よかったと思います。特に主人公とヒロインはインディーゲームとしては違和感なく受け入れられました。このゲームがフルプライスのゲームであればもうちょっと頑張ってといいたくなるところですが、キャラクターとの相性はよかったと思います。
肝心のお話ですが、全体のシナリオはよくできていると思いますが、ストーリーとしてはどうだろうというところがありました。序盤はとてもよくできていて話に引き込まれるんですが、中盤から終盤にかけての展開はちょっとついていけなかったです。面白くないわけではなく、話がよくわからない状態になってしまったのです。
このゲームはシナリオやシステムがSFの設定とうまく融合されていて、バッドエンドこそありますが、お話はすべての出来事が1つの真実に収束していく形となっています。ルート分岐によって別ルートになったとしてもそのルートがただの枝葉というわけではなく、大きなシナリオの一部で不可欠な要素となっています。
そこがこのゲームのよくできたところなのですが、逆に言えばほかのルートのすべての出来事を覚えている必要があり、そこが大変なところです。一気にクリアまでプレーしたのならまだしも、自分のように何日かに分けてプレーすると、前にプレーしていた内容を若干忘れたりしますので、あとから推理パートで別ルートのことを持ち出されても、そうだっけ?となってしまいます。
そうはいっても作品全体を通して読ませるゲームとなっていますので、推理力は不要で、ある程度ルートを回収していれば自動的に犯人が分かるようになっています。ただ、ゲームの終盤では犯人当て作業がありますが、展開的に何をすればいいのか若干わかりにくいところがあって、自分が間違っているのか、まだルートを回収できていないのか若干混乱するところがありました。
そのほかに、大学浪人生の位置づけの主人公の一人称が「私」であることや、専門的過ぎて会話が難しく感じるところがあるなど、ゲーム体験がダメになることはありませんがプレーをしていて若干気になるところがありました。とはいっても500円(購入時は400円)という価格から考えると文句のつけようのない出来の作品であることは間違いありませんが。
神無迷路は昔ながらのノベルゲームをストレスなくのんびりと楽しみたいと思う人にはお勧めのタイトルです。
プレーNo | #0147 |
タイトル | 神無迷路 |
発売日 | 2024/5/15(Steam) |
プレーしたプラットフォーム | Steam |
プレー期間 | 2024/5/21~2024/5/25 |
プレー時間 | 11時間 |
評価 | 4 |